ISO蔵ちょっ蔵珍道中 新JKゴールデン街桜まつり1
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ISO蔵ちょっ蔵珍道中 FICTION, ISOKURA, NOVEL, sake
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
桜まつり
1
平成も差し迫った三十年の春。彦左衛門は新O久保駅の改札をぬけて、最近贔屓にしているムスリムの串焼き屋で辛味の効いた鳥串を購入していた。酒も煙草も禁止している戒律に厳しいその店は、いつも店内がガランとしているが、店頭販売のその串はいつも賑わっていた。彦左衛門は、その場でかぶりつきながら、ぼんやりと今日の予定を考えていた。友人からは、FBで「行くかも」と連絡はあったものの、この男は、割と追っかけることをしない。いや一人が好きというわけではない生来の無粋を嫌う性格なのだ。来たければきっと連絡がくるだろう。という感じである。
夕暮れ時のコリアンタウンは観光客なのか地元民なのか、世界中のブランドを身にまとった多国籍な人種であふれていた。肌の黒いドレッド頭の若者がI♡NYを着て、韓国料理を食べながら日本観光をする。それが新O久保の日常だ。街ゆくカラフルをかわして、本絞りを片手に小道を抜ける。男女のまぐわい宿が多いのもこの土地の特徴だ。さすがにこの時間では立ちんぼで声をかけてくる売娘もいない。歩きながら今日の目的地まで13件のまぐわい宿を越えた。目的地の新JKゴールデン街はもうすぐそこだ。春らしい風が食べ物と化粧品の匂いを流してくれて心地よい。
今年の桜は足が早く3月の末には満開となっていた。といっても、毎年この新JKゴールデン街の桜まつりは4月の後半に開催するものだから、桜と一緒に乾杯というわけではない。要は呑兵衛が昼間っからゴールデン街で呑みたいからなんとかしてくれとう願望を、各店の店主たちが一見さんの立ち寄りにくいゴールデン街の「顔見世」も兼ねて開催している祭である。彦左衛門は、「桜まつり」を目指して、新O久保駅から呑兵衛ダラリと、まぐわい宿を数えながら歩いていたわけである。昨年は縁あって桜まつりでISO蔵酒造の酒を投げ銭で販売していた。その縁がなんやかんやと重なって呑兵衛仲間が増え、今年も誰かにあえるだろうぐらいのノリである。
夜になれば多国籍な客で通りまであふれかえるCピオンは、どうやら桜まつりには参加していないようで、入り口を閉ざしている。
彦左衛門は、まず昨年手伝ったISO蔵酒造の屋台が出店してる新JKゴールデン街にある駐車場を訪ねる。普段は、ゴールデン街の店に納品する酒屋の車や、この街らしいフルスモークの外車が留まっている駐車場。ここも桜まつりの時には、主催の実行委員会が家主に頭を下げにわざわざ渋Y界隈まで出向いている次第。なんとも頭が下がらうのは呑兵衛のこちらのほうだ。
「彦左衛門さん!来ていましたか!」
振返ると昨年この祭りでISO蔵酒造の酒を大層気に入り、投げ銭に何度も銭を投げていたご婦人が二人そこに居た。
一人は名をM﨑さんといい、都内で服飾に奉仕しており酒の席だけ旧姓を名乗るという根っからのなんとやら。
もう一人はK藤さん。Kしわから酒呑むためにわざわざ都内くんだりまで出没するこちらもなんというか。そんな二人である。
昨年の祭りで知り合って、彦左衛門が麵屋をやっていると聞くとそこまで足のばすなど、動ける呑兵衛である。この日もきっと呑んでるだろうなんて思ったら早々に出逢えたわけだ。といってももちろん二人ともすでに一軒別で呑ってきていい感じだ。
「携帯が使えないから飯田橋のもつ煮屋で会えたのが奇跡なんだよ!」
意気揚々と語る天真爛漫K藤さんと、それを笑って許せるM﨑さん。なんとも良い呑兵衛仲間だ。この二人に会えたなら祭りも盛大に楽しめるもんだと、この日一回目の乾杯をして思う彦左衛門である。
(つづく)

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